ある世界での話

イザイユの木の下で Ⅰ

真っ黒の宇宙の中

ある輝く星から
一人の少女が舞いおりてきました

羽のように柔らかく
水のように滑らかで
雲のように軽やかな衣をはためかせて

地上におり立つと
そこは一面灰色の砂に埋もれた
かつて栄えた文明の廃墟でした

生き物の気配はなく
うず高くそびえ立つ建造物がひしめきあい
冷たく淀んだ空気がどんよりと流れていました

少女がこの風景を見るのは初めてではありませんでした

いつも遠くから眺めていたこの街
乾いた風とサラサラした砂
静かで淡い光景に
どこか心地よさを感じていました

ふわりと飛び回りながら
少女はひとつの建造物に目をとめ
割れた窓から部屋に入りました

誰もいない
死んだモノたちが
ただひっそりと
あるだけ

部屋の奥には扉が見えたので
少女は行ってみようと思いましが
すぐに足を止めました

扉に向かうにつれて重くなる空気
どんどん光が届かなくなる視界


”違う・・・!”


”ここは私の居たいところではない!”


少女の内側と外側から
そう響いたのでした

少女は悲しみを抱きながら
建物を飛び出し
雲を抜けて
空高く舞っていきました

つづく

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